授業に集中できない、スポーツが楽しめない、学校を休んでしまう、などの悩みを抱えていることが報告されています。
スポーツ庁の調査によると中高生女子の約7割が生理痛(月経痛)の悩みを持っており、月経前症候群(PMS)や月経過多と比較して、月経痛による影響が大きいことが分かります。月経関連症状なしと答えた人の割合は、わずか20%でした(図1)。
また、海外の調査では、月経痛が強くなるほど、学業への集中力やスポーツへの影響が大きくなっていることが報告されています。
図1 中高生女子の学業・運動に影響を与える月経関連症状
平成28年度のスポーツ庁委託事業「子供の体力向上課題対策プロジェクト」において、千葉県内の中学校・高等学校各1校(女子生徒計608名)を対象に行ったアンケート調査の結果です。
日本子宮内膜症啓発会議 平成28年度スポーツ庁委託事業「子供の体力向上課題対策プロジェクト」
女子特有の健康問題『月経関連疾患と学校生活』より改変
日常生活に支障をきたすようなひどい生理痛のことを「月経困難症」と言います。月経困難症は、下腹部の痛みのほかにも、頭痛や肩こり、腰のだるさ、生理前のイライラなど様々な症状を引き起こします。
また、月経困難症は子宮内膜症という病気の予備軍といわれています。子宮内膜症は本来子宮の中にあるべき子宮内膜と似た組織が、子宮以外の部分で増殖してしまう病気です。その結果、炎症や周辺組織との癒着が起こり、痛みを引き起こします。海外の調査では、思春期に月経困難症をたびたび経験していた人は、なかった人に比べて子宮内膜症に2.6倍なりやすいことがわかっています。
治療せずに放置していると、生理以外のときにも痛みを感じるようになり、日常生活に支障をきたしてしまう場合があります。
チョコレート嚢胞は卵巣で子宮内膜が増殖して血腫ができることで発症します。卵巣の中に溜まった血腫がチョコレートのような色をしていることからこのような名前がついています。
卵巣や卵管に癒着が起こると、スムーズな排卵が阻害されてしまい、場合によっては不妊につながることがあります。
チョコレート嚢胞がある場合、卵巣がんのリスクが上昇するといわれています。
お子さまは以下のような症状を我慢していませんか?
当てはまる場合は婦人科の受診を勧めてあげましょう。
中高生が受診した際に、いきなり内診をすることはほとんどなく、次のような診察・検査を行います。
生理不順や生理痛の有無などを尋ねます。
子宮や卵巣に異常がないか診るために行います。中高生の場合は先生と相談して、おなかの上から検査を行うこともできます。
ホルモン値や貧血の有無をチェックします。
検査の結果、子宮内膜症やチョコレート嚢胞が見つからなくても、子宮内膜症予備軍である可能性があります。月経困難症がひどくなる前に、治療を行うことが大切です。
女性のライフサイクルの変化に伴い、10代など若い世代でも生理のトラブルが増加しています。生理に関する相談は、中高生の多くが保護者にしているというデータがあります(図2) 。
「生理痛は誰にでもあり、病気ではないから、我慢するもの」と放置せず、お子さまの訴えに耳を傾けてあげてください。
図2 中高生女子の相談相手
平成28年度のスポーツ庁委託事業「子供の体力向上課題対策プロジェクト」において、千葉県内の中学校・高等学校各1校(女子生徒計608名)を対象に行ったアンケート調査の結果です。
日本子宮内膜症啓発会議 平成28年度スポーツ庁委託事業「子供の体力向上課題対策プロジェクト」
女子特有の健康問題『月経関連疾患と学校生活』より改変
子宮内膜症は早ければ中学生から発症する病気で、進行すると、月経時以外にも痛みを感じるようになったり、場合によっては不妊や卵巣癌になるリスクが高まります。そのため、早い段階で気づいて、治療することが大切なのです。
普段からお子さまの体調変化を気にかけ、相談しやすい環境を作ってあげましょう。親子といえども生理痛の程度は人それぞれ違います。「生理痛ぐらい誰にでもあるもの」と放置せず、痛みがひどい場合には受診を勧めてください。痛みを我慢することで、勉強や楽しみにしているイベントに支障が出てしまってはもったいないですね。日常生活の改善だけではなく、お子さまの輝く将来のためにも、適切な治療を受けることがとても大切です。
また、お母さま自身も身体に不調を感じておられませんか。お母さまが元気でないと、お子さまのサポートもままなりませんよね。身体のことで気になることがあれば、婦人科へ行ってみてください。
お子さまがいきいきと
活躍できますように!!
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